女性のオーガズムの謎、8回目です。今回の説は「擬似男性的反応」説です。
人類学者のドナルド・サイモンズは、女性のオーガズムは必要があって発達したものではない、と主張しています。むしろ、女性のオーガズムは男性の「乳首」のようなものだと。女性の場合、授乳のために発達した乳首を持っていますが、男性は授乳する必要がないのにもかかわらず、小さな乳首を持っています。
ペニスもクリトリスも胎児期の相同の組織から発達することは以前紹介しました。男性のペニスは繁殖のために大きく発達しますが、女性のクリトリスは小さいままです。しかし、感覚神経は男性と同じようにあります。このことから、この説では、女性のクリトリスには「オーガズムに至る潜在能力が残されている」という考えます。
女性のオーガズムには生物学的な意味はなく、副産物的な「能力」である、というわけですね。
この説では、他の説では説明できないことも難なく説明できます。オーガズムに達することのできない女性の存在も副産物的な能力であると考えれば納得です。
また、なぜ動物の中で人間の女性だけがハッキリとしたオーガズムを持っているのかも説明できます。人間の男性は他の動物よりも極端に「性欲が強い」とされていますが、女性のオーガズム能力が男性のものから「派生した」と考えると、女性のオーガズム能力もそれにつられて上昇したと考えられるでしょう。
しかし、この説を主張している研究者の多くは「オーガズムはクリトリスによってしか得られない」と考えているようです。実際には膣への刺激によってもオーガズムに達する女性がいることが知られていますし、膣による性感とクリトリスによる性感では脳の異なった領域が活性化することが知られています。
膣でのオーガズムを「男性から派生した能力」と考えるのは少しばかり乱暴なように思います。とはいえ、今のところこの説は、女性のオーガズムをもっとも上手く説明しているようです。
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