割礼や包茎治療による包皮切除は前立腺がんリスクを下げるかもしれません。といっても、これは初めてセックスする前に手術した場合だけの特典のようです。
シアトルにあるフレッドがん研究センターのWrightらは、3000人の男性に「包皮切除をしたかどうか」また「したとしたら、いつしたのか」を質問しました。これらの3000人のうち、約半数は前立腺がんにかかっている人々でした。
その結果、包皮切除したグループでは、しなかったグループとくらべると、15%ほど前立腺がんにかかっている人の数が少ないことがわかりました。また、悪性の前立腺がんで比較すると18%も低いことがわかりました。
しかし「初体験」の後に包皮切除した人々では違いがみられなかったことから、「包皮切除によるリスクの低減」は初体験前にした場合に限定されるようです。
研究チームは、前立腺がんは性感染症による前立腺の炎症によって促進されると考えています。包皮切除は「病原菌の温床となりやすい包皮の下の粘膜層」を切除してしまうため、切除した人々のペニスでは「前立腺の炎症につながる病原菌」の増殖が抑制されているのではないかと考えられます。
この研究に関連して、たくさんのセックスパートナーを持つかセックスを高頻度で行う男性では前立腺がんのリスクが40%まで高まることが知られています。
一方、頻繁にマスターベーションする男性では前立腺がんのリスクは下がります。これらのことは、性感染症によって引き起こされる前立腺の炎症が「がん」につながる可能性を強く示しています。
もともと、宗教的儀式である「割礼」は感染症を防ぐ目的で発生したといわれています(過去記事:なぜ「割礼」が生まれたか)。そういう意味では、この研究結果も納得ですね。しかし、ほかの記事(包茎ペニスはダメなペニス?)でも書きましたが、包皮には繊細な感覚神経が多数分布していることが知られており、それを切除してしまうことはセックスでの喜びを低下させてしまうかもしれません。
切るべきか、切らざるべきか。包皮に富む男性にとっては悩ましい問題ですね。
生理が近づくといつもと調子が変わる女性がいます。2011年3月、京都大学の研究者たちが「生理期の女性の微妙な変化を捉える」ための、よくデザインされた実験手法を発表しました。
以下、プレスリリースの引用です。
閉経前の成人女性の大多数は排卵後の生理がちかづく時期になると、多少とも気分がおちこんだり、鬱になったりすることは以前からよく知られています。欧米ではPMS(前メンス症候群)という診断名が流布しています。しかし、いままでその判断は本人への質問紙による、主観的な気分の表現のききとりにとどまり、気分の変化を客観的にとらえる試みはまったく行われてきませんでした。
最近、正高信男 霊長類研究所教授らは、60人の29~30歳の健康な独身女性を対象に生理後5日(卵胞期)、13日(排卵期)、25日(黄体期)に8枚の花の写真と1枚の蛇の写真を同時にみせ、そのなかから蛇の写真を正しくできるだけ迅速にみつけだすという視覚探索課題の実験をおこない、その成績を比較する実験をおこないました。その結果、黄体期には卵胞期、排卵期にくらべ、蛇の発見が早くなる事実をみいだしました。
おもしろいことに、反対に8枚の蛇の写真と1枚の花の写真を同時にみせ、そのなかから花の写真をみつけだす成績には変化がありません。嫌悪刺激に対する感受性だけが、生理前に特異的に亢進すると考えられます。この手法は、人間の不安状態を簡易にかつ信頼性が高い状態で計測する可能性をひらいたものと考えられます。
蛇の画像を見つけ出すスピードが早くなったということですが、論文を読んでみるとその差はわずか0.2秒だそうです。非常に微妙な変化をとらえた実験なんですね。
この「前メンス症候群」は生理がくると消失しますが、妊娠して生理が来ない場合はその症状は持続するそうです。
このことから研究者たちは、「ヘビをより早く発見する能力の高まり」は「妊娠した母体を外敵から守るための準備」だと考えているようです。そうだとすると、女性の身体はよくできていますよね。
完全に成熟する前、人間でいうと「思春期」にセックスした場合、その後の神経や体の発達に悪影響を与える可能性があるという研究が、2011年にオハイオ州立大学の研究者らによって発表されました。
研究者たちは、人間でいうと思春期にあたる誕生後40日の雄ハムスターをメスのハムスターを交尾させました。そして、その雄ハムスターを成長させ、若いうちに交尾していない普通のハムスターと比べました。
その結果、思春期に交尾したハムスターには、普通のハムスターと比べて「抑うつ的な行動」「成長の抑制」「小さな生殖組織」「未発達な脳組織」というネガティブな影響が見出されたのです。
さらに、思春期に交尾したハムスターの脳の一部では、「インターロイキン1(IL-1)」という「炎症」に関わっているとされる遺伝子が高いレベルで発現していました。これは、脳で炎症が起こっている可能性を示しています。
そのうえ、それらのハムスターには「自己免疫疾患」の兆候すらありました。自己免疫疾患は自分自身の細胞を異物として免疫システムが攻撃してしまう病気ですね。
これらのネガティブな影響は、実際の身体の損傷に結びつくほどは強くありませんでした。しかし、これらの影響は「思春期のセックス」がストレスとして発達途中の身体に認識された結果ではないかと考えられます。
「思春期におけるセックス」の研究は、以前は主に女性を対象に行われていました。また、その手法もアンケート調査によるものが主体でした。今回の実験は動物実験ではありますが、生理学的実験手法を用いています。そこが非常に斬新なところです。
人間でも、思春期において脳や神経が劇的に発達することが知られています。この研究はハムスターを使った動物実験ですが、研究者たちは人間にも適用できるのではないかと考えています。
研究者たちはまず、特殊な観察用のチャンバーに年老いたメスと若いメスをいれました。さらにそのチャンバーにオスを投入し、その行動を観察したところ……オスのハエは「若いメス」に惹かれることが明らかとなりました。また、この結果はオスメス反対にしても同じでした。つまり、メスも「若いオス」に惹かれることがわかったのです。
そこで研究者たちは、ハエのフェロモンを化学的に抽出し、ハエが年をとるにしたがって、その分泌パターンに違いが見られるかどうかを調べました。
その結果、「クチクラ炭化水素」と呼ばれるフェロモン群は、年をとるほどにその分泌パターンに変化が生じることがわかったのです。
最後に、メスのハエからフェロモンを取り除き、そこに若いハエあるいは年老いたハエから抽出したフェロモンを添加してオスがどちらに惹かれるか観察しました。その結果、オスは「若いフェロモン」をふりかけられたハエに惹かれることがわかりました。
年を重ねるとフェロモンのパターンが変わり、若いフェロモンほど好まれる……ハエは敏感にフェロモンにコントロールされているんですね。人間の場合も「若さ」が魅力であることは確かですし、あたかもフェロモンを出しているような魅力的な人もいます。
しかし、ヒトのフェロモンは発見されていませんし、人間の「魅力」の基準はもっと複雑です。ハエと違って、あの手この手でアピールできるだけ幸せですね。
それは、「患者の血液(血小板)から取り出した『増殖因子』を膣内上壁にある『O-spot』に注射することにより、患者の性感を大きく向上させる」という新しい技術についての報告です。
この「O-Shot™(Orgasm Shot™)」と名付けられた新技術について話すために、まず、出てきた専門用語を整理してみましょう。
1)増殖因子
まずひとつは、「増殖因子」について。これは細胞に情報を伝える働きをもつペプチドタンパク質です。ある種の増殖因子は、流行りの「iPS細胞」の培養などにもよく使われています。コレを患者の血液から抽出したことが、まずポイントの一つです。2)O-spot
次に「O-spot」ですが、これは発表した研究者らによると「『G-spot』とは明らかに違う膣上壁にある明確な性感帯」だそうです。「増殖因子」を「性感帯」に注入することによって性感帯を肥大化させる……それが研究者たちのロジックのようですね。一見、合理的なようにも思えますが、これについてはちょっと疑問です。
まず、増殖因子には様々な作用があり、必ずしもすべての細胞を増殖させるわけではありません。受けての細胞によって効果が異なります。身体の一部分に注射したからといって、そこが肥大化するわけではないのです。
また、O-spotという性感帯についても初耳です。現時点では断定できませんが、存在自体がちょっと疑わしいところです。
ですので、この新技術については「疑いの目をもって静観する」というのが一番良さそうです。実際、多くの科学者から批判を浴びているようです。
ちなみに、この研究グループでは、「『G-spot』にコラーゲンを注射することにより一時的に肥大化させ、性感を高める」という「G-shot」という治療?を2002年から行なっていますが、それもまた議論をよんでいます。
このような新技術にはすぐに飛びつくことなく、冷静に対処したいですね。
たとえば、生活に適した環境にいるときは、オスは特定のパートナーとの間に誕生した子供を育てることにエネルギーを注ぎます。
いっぽう、外敵が多かったり食料が少ないなど、生活が苦しい環境にあるとき、オスは複数のメスとセックスをする傾向があります。不特定の相手とよりたくさんの子供をつくるための行動です。
「効率」を考えると、それぞれの環境に適した繁殖戦略なのでしょうね。
メスの場合は、一生に産める子供の数に限りがありますから、オスのような行動をとることにメリットはありません。どういう環境であっても、生まれた子供に最大限の投資をします。
それでは、人間ではどうなのでしょうか?人間の男性も、苦しい環境にあるときは性行動に変化が現れるのでしょうか?
アメリカのカンサス大学の研究者たちが、2011年にこんな実験を行いました。
168人の大学生を被験者として、彼らに「自分の死について」深く考えてもらいました。実験のために被験者を苦しい環境におくわけにはいきませんから、死について深く考えてもらうことで、心理的に似たような条件をつくりだしたのです。「死を意識する=過酷な環境」というロジックですね。
その後、被験者たちに「ポルノ画像」あるいは「普通の画像」を見せ、それらの画像に対する反応を調べたのです。すると、死について深く考えた後だけ、ポルノ画像に対する反応が高まったのです(心拍数や反応速度など)。普通の画像に対しては、まったく変化はありませんでした。
また、この変化は男性のみで、女性にはなんの変化もありませんでした。
この実験は、人間の男性も苦しい環境にあるときは性行動を変化させる可能性を示しています。浮気心を防ぐためには「心安らかな生活」こそが大事なのかもしれません。
「Sex on the Brain?: An Examination of Frequency of Sexual Cognitions as a Function of Gender, Erotophilia, and Social Desirability」という最近の論文で、人は一日に、どのくらいの頻度セックスについて考えているのか?が詳しく調べられました。
この調査は大学生を用いて行われました。その結果は人により大きな幅がありました。
セックスについて考える回数は、女性は1日に1回から140回。平均は18.6回で中央値は9.9回となりました。一方の男性は1回から388回。平均は34.2回で中央値は18.6回でした。
この結果は今まで知られていたような、「5分おきに考える」との俗説よりも少ないものでした。中央値から考えると、男性の場合でもせいぜい1時間に1回とちょっと、考えていることになります。
本研究でも、男性のほうが女性よりもより多くセックスについて考える傾向にあるという結果が出ました。しかし、男性の場合、睡眠や食事についても女性よりも多く考える傾向がありました。
研究者たちは、女性のほうが男性よりも少ないという結果が出たことについて、「社会的・文化的な影響が少なからずある」と考えています。つまり、このような調査においても、女性のほうが「セックスについて考えています」とは答えにくいのです。人間が何を考えているのかを調査するのも、なかなか難しいものですね。
今までの研究でも、「左右対称性」や「くびれのバランス」など、異性の体のどこが魅力的なのか?をしらべる研究はありました。しかし、今回の研究のように、「体」と「顔」全体を比較した研究は初めてとのことです。
テキサス大学の研究グループは375人の大学生を対象に調査を行いました。
実験では、被験者は、「顔と体」どちらも隠した異性の写真を見せられました。そして写真に映っている人物に対して、「短期間だけ付き合えるかもしれない異性である」もしくは「長期間付き合えるかもしれない異性である」と説明を受けました。
その上で、隠されている「顔」か「体」、どちらかだけを見ることを許されたのです。
その結果、「長期間付き合えるかもしれない異性である」との説明を受けた男性では25%しか体を見なかったのに対し、「短期間だけ付き合えるかもしれない異性である」との説明を受けた男性では51%もが写真の体を見ることを選択したのです。
一方、女性を対象に同じ質問をしたところ、「顔」も「体」もほとんど違いはありませんでした。
男女の繁殖戦略の違いが、こういう部分にも現れているのでしょうね。面白いですね。
この研究を行ったのはヒューストンにあるライス大学のChen率いる研究チームです。
彼女たちは、1年から7年の同棲歴がある20組のカップルを使って研究を行いました。
カップルを別々に分けた上で「脇の下パッド」を装着してもらい、「幸せ」・「恐れ」・「性的興奮」・「平常心」を感じるような映像をそれぞれ見せました。映像を切り替えるたびに「脇の下パッド」は新しく付けかえました。
そして「“各映像を見たときの汗”が染み込んだ脇の下パッド」をビンにいれ、それぞれのパートナーに嗅がせ、そのときの感情を推測させたのです。
その結果、カップル達は約60%もの確率で汗の匂いからパートナーの感情を“嗅ぎ分ける”ことが分かりました。各感情で的中率に違いはなく、正答率は付き合いが長いカップルであるほど上がったそうです。
うーん。
感情にも“匂い”があるとは驚きですね。「阿吽の呼吸」の秘密はこんなところにもあるのかも知れません。あなたはパートナーの感情を嗅ぎ分けることができますか?
1回の月経周期で排卵される卵は普通1個で、女性が全生涯を通して排卵する卵子は400個程度といわれています。男性が一回の射精で数億もの精子を送り出すことを考えると、ずいぶん少ないですね。
長い人生でたった400回しか起こらないイベント「排卵」。しかも体の中で起こっていることですから、ごく最近まで「排卵」がどんな風に行われるのか、見た人はいませんでした。
しかし2008年、ブリュッセルの医者Jacques Donnezが、45歳の患者の子宮摘出手術の最中に患者の卵巣で排卵がおこっていることを発見し、写真に収めたのです。以下の図です。
Eggと書かれた黄色のものが人間の卵子です。宝石みたいできれいですね。
観察の結果は、以前の常識とは大きく異なっていました。多くの研究者たちは、限られた情報から、卵子は瞬間的に排卵されるものだと考えていました。しかし、卵子の排卵は非常にゆっくりで、完全に排卵されるまで15分もかかったのです。
私たちすべてが、誕生前に「排卵」を経験しているわけですけど、人間の体にはまだまだ分からないことが沢山あるんですね。
さらに75歳から85歳のグループでも、3割以上もの男性が性的に活発であると報告されています。高齢になってもオトコなんですね。
一方女性ではどうなのでしょうか?同じ調査によると、65歳から74歳のグループでは40%、75歳から85歳のグループでは17%しか性的にアクティブではないようです。
おそらく、この男女の違いはあの偉大な薬「バイアグラ」の影響もあることでしょう。老人であっても勃起を持続することができるようになるからです。しかし、もちろんそれだけでは説明できません。バイアグラが発売される前のデータからも、男女の違いは認められるのです。
それでは、「セックスの欲求」についてはどうなのでしょうか?研究によると、57歳から64歳のグループでは、77%の男性が「セックスをしたい」と答えているのに対し、同じように答えた女性は36%しかいません。
このことは、多くの高齢女性がパートナーの要求に応じて望まないセックスをしている可能性を示しています。
なぜ、このような男女の違いが生じるか、この研究は説明できてはいません。しかし、高齢女性がセックスを嫌がる理由は閉経後の「潤い不足」による「性交痛」が原因だという報告もあります。
それだけが問題なら、潤いゼリーの使用などで解決できるかもしれませんね。いずれにせよ、カップルで解決しなければならない問題のようです。
健康であれば、人は死ぬまでセックスができるのですから。
しかし最近、オックスフォード大学とアメリカ国立衛生研究所のチームにより、ストレスレベルが高いほど妊娠する可能性が低くなるという研究結果が報告されました。
研究は18歳から40歳までの“妊娠を望む女性たち”を対象に行われました。
彼らは、生理周期ごとに被験者から唾液サンプルを集め、唾液中に含まれる「コルチゾル」と「アルファアミラーゼ」の量を測定しました。
コルチゾルは長時間にわたるストレスの指標になり、アルファアミラーゼは短時間のストレスの指標となる物質です。
一定期間の後、各被験者の妊娠状況を調べたところ、「アルファアミラーゼ」のレベルが高い女性たちはストレスがない女性たちに比べて、12%も妊娠率が低いことが分かりました。一方、「コルチゾル」のレベルが高い女性たちでは妊娠率に違いはありませんでした。
「アルファアミラーゼ」が指標となる“短時間のストレス”とは、自然の状況では捕食者や外敵が現われ、それに立ち向かわなければならない状況で生じる生体反応だと思われます。
もしかしたらそういった“子育てに不都合な環境”では、女性の体は妊娠をセーブしてしまうのかもしれませんね。
いずれにせよ、子供を望むカップルはできるだけリラックスした環境を作ったほうがいいかもしれません。
この研究を率いたのは、米国Wake Forest大学のAnthony Atala博士です。
彼は細胞をスプレーでコラーゲンの“型”に吹き付けることにより原型を作り、それを培養液中で培養することで器官を再生するという画期的な方法でよく知られた研究者です。彼の研究グループはすでにその方法を使って実にさまざまな組織を作っています。
その彼らが次に着手したのが「人工ペニス」の研究というわけです。
彼らはペニスの勃起に重要な役割を果たす組織である「海綿体」を成型・培養し、それを外科的に取り除いたウサギへと移植したのです。
その結果、移植された多くのウサギで人工ペニスの勃起が確認され、そのうちの何匹かは子供を作ることさえできました。
しかも興味深いことに、なぜか、人工海綿体を移植されたウサギは正常のものよりも「好色」だったそうです。海綿体の機能と性欲には関連があるのでしょうか。
いずれにせよ、この研究はペニスの機能的問題でセックスができなくなった人々の希望になるかも知れません。
一方で、近年、少女の思春期が早まってきていることがたびたび問題になっています。アメリカでは、7歳までに胸が膨らみはじめてしまう少女が10%もいるということです。
しかしなぜ、少女の思春期は早まっているのでしょうか?もしかしたらそれは「進化の過程で獲得した能力」なのかもしれません。
先日発表された英国バークベック大学のJay Belskyらの研究によると、幼年期に不安定な環境で育てられた少女は、安定的な環境で育てられた少女に比べて思春期の開始が早くなる傾向があるそうです。
彼らは373人の少女を長期間にわたって調査しました。生まれて15ヶ月後に母親との関係を調べ、その後9歳から15歳になるまで、身体的成熟度を追跡したのです。
15ヶ月時点での調査とはどのようなものかというと、研究室で母親と赤ちゃんをいったん離し、再開させた後で赤ちゃんがどのような反応をするか見るというものです。
赤ちゃんが笑ったり、声を上げたり、手を伸ばしたり、母親に対して嬉しそうな行動をとったときには「母親との関係が強い」と評価し、再開した後でもそのような行動が認められなかった場合には「関係が弱い」と評価しました。
その結果、「母親との関係が弱い」と評価された少女は、平均して2ヶ月から4ヶ月、思春期と初潮の開始が早かったことが明らかとなったのです。
生き物にとって、幼年期の環境が悪いという状況は生存率の低下を意味しています。繁殖のチャンスをできるだけ高めるために、体は身体的成熟を早めるのかもしれません。
とはいっても、思春期の開始時期が早まっているのはここ150年ほどの傾向です。幼年期の環境だけが主要因ではなく、栄養的に満たされているという理由も大きいと思われます。
スウェーデンのカロリンスカ研究所とバングラディシュのNGO「BRAC」の研究グループは、バングラディシュに住む720人の妊娠中の女性を対象に調査を行いました。
それぞれの女性の妊娠期間中の精神状態を評価し、その子供が生まれてから48時間以内に体重を測定したのです。
調査対象のうち、18%の女性はウツであるとみなされ、26%の女性は不安を抱えているとされました。そして、それらの女性はそうでない女性と比べて、小さな子供(2500グラム以下)を産む率が2倍も高いことが明らかとなりました。
特に途上国では、体重の軽さと死亡率には強い相関関係があることが知られています。これは大きな問題ですね。
この調査は途上国で行われたもので、そこでの「不安」や「ウツ」は貧困や栄養状態と切り離せない部分もあると思われます。実際この調査でも、「不安やウツ」を抱える女性の平均体重はそうでない女性と比べて、軽い傾向にあることが示されています。
しかし、その体重差を考慮してもなお、「不安やウツ」の子供への影響は大きいと言うことです。「妊娠期間中に不安や悲しみを感じずに過ごすこと」は、母親にとっても生まれてくる子供にとっても大事なんですね。
それにしても、なぜ夫婦は似ているのでしょうか?
これに対する可能性として、1)長い間夫婦生活を続けると似てくるから、2)パートナーとして似た人を選ぶから、の2つが考えられます。
一般的には、「結婚生活が長くなると夫婦は似てくる」と言われていますよね。実際はどうなのでしょうか。
ミシガン州立大学の研究者たちはこの疑問を解決するために、1296組もの夫婦の性格を分析しました。
その結果、夫婦が似ているのは似てくるのではなく、似た人を選んだ結果だということが明らかになりました。
しかし、この結果には唯一の例外があります。それは攻撃性です。夫婦のどちらかが攻撃的であれば、夫婦生活の過程でもう一方も攻撃的な性格になるとのことです。おそらくそのようなカップルでは、攻撃的な相手に対抗するために、攻撃性を身につける必要があるのでしょう。
この結果は結婚相談所などのサービスにとって、とても重要なデータになると思われます。結婚相談所で出会った男女の離婚率の高さが指摘されていますからね。
先日ボストンで行われた第240回アメリカ化学学会で報告された研究によると、この民間療法には科学的根拠があるようです。
尿路感染症は、女性の3人に1人はかかったことがあるといわれるほど一般的な病気です。特にセックス後に発症してしまうことが多く、いったん罹ったことのある女性は再発を繰り返す傾向があるといわれています。症状は、発熱や排尿痛。アメリカでは、この病気が理由で毎年800万人も病院に訪れるとか。
クランベリージュースが尿路感染症に効果的かどうか調べるため、研究者たちは人々の尿中に含まれる大腸菌を調べました。クランベリージュースを「飲む前」と「飲んだ後」の尿中の大腸菌を採取し、その形態を観察したのです。
すると、クランベリージュースを飲む前に採取した大腸菌は、互いにくっつき、バイオフィルムと呼ばれるぬるぬるした膜を形成したのにもかかわらず、クランベリージュースを飲んだ後に採取した大腸菌では互いの接着もバイオフィルムの形成も抑制されていたのです。
バイオフィルムのようなネバネバしたものが尿路の中に形成されてしまうと、大腸菌は定着し繁殖しやすくなってしまいます。つまり、尿路感染症を引き起こしやすくなります。
クランベリージュースを飲むことでバイオフィルムの形成が抑制されれば、大腸菌は尿と共に排出されやすくなると考えられます。まさに、クランベリージュースが尿路感染症を抑制するというわけです。
昔の人の知恵というのは大したものですね。クランベリージュースの効果は飲んだ後8時間以内に現われるようです。
このことを踏まえると、尿路感染症への対策はこうなります。
1)セックス前にクランベリージュースを飲んでおく。
2)セックス後はすぐに排尿する。
これだけです。尿路感染症に悩んでいる方は、試してみてください。
ほとんどのエイズは性交渉によって感染し、中でも男性キャリアが女性に感染させるケースが多いといわれています。
2010年8月19日付けで発表された、ノースキャロライナ大学のSwanstromらの論文によると、「エイズは男性の精液の中で変化する」ことがわかったそうです。
この研究のなかで研究者たちは、同じ患者の「血中のエイズウィルス」と「精液中のエイズウィルス」を比較しました。
その結果、エイズ感染者の血液中には数多くのタイプのエイズウィルスが存在したにもかかわらず、精液中のエイズウィルスには単一あるいはごく少数のタイプのエイズウィルスしか見当たらないことが分かりました。
エイズは変化してバリエーションを作りやすいウィルスとして知られています。それなのになぜ、精液中ではバリエーションが少ないのでしょうか?
研究によると、精液が作られる精管の中というのは免疫的に活性が高い場所らしく、そこではごく一部のタイプのエイズウィルスしか増殖できないようです。結果として、血中のウィルスと精液中のウィルスでは組成が変わるということですね。
この「エイズウィルスの変化」が感染にどのような影響を与えるのかは現時点ではわかりません。しかし、精液中のウィルスは「過酷な環境で選び抜かれたウィルス」という印象をうけますね。
エイズウィルスの性質がどのようなものであるにせよ、我々にできる予防法は限られています。セックスは信頼できるパートナーとだけするか、そうでなければコンドームをしっかり着用した方が良さそうです。
今日はちょっとお固すぎる内容だったかもしれませんね。もう少し気楽によめる記事も書きますので、今後もよろしくお願いします。
今年5月に学会で報告されたその研究とは、「太めの10代の女の子」は「同世代の標準体重の女の子」に比べて、性経験が早く、複数の異性と体験し、コンドームなど適切な避妊処置をとらない傾向がある・・・・・・というものです。
研究者たちは、アメリカの中高生に対して総合的に行われたアンケートの中から「性と体重」に関する部分を抽出してデータを取りまとめ、以下のことを明らかにしました。
1)標準体重の女の子は13歳以下では6%しか性体験がないのに対し、太った女の子では15%が13歳以下で性体験がある。
2)標準体重の女の子では、29%だけが10代のうちに複数のパートナーと性交渉をもつのに対し、47%もの太った女の子が複数のパートナーと性交渉を持っている。
3)太った女の子では標準体重の女の子にくらべ、コンドームなどの避妊具の使用率が20-30%も低い。
なぜこのような違いが現われているのでしょうか?一般的には、標準体重の方が性的に魅力的なはずで、セックスの機会も増えるように思えるのですが・・・・・・。
研究者たちは、その理由として
1)太った女の子の方が身体の発育が早く、それにより性の知識を持たないままセックスをしてしまう。
2)太った女の子は自分に「魅力がない」と感じており、ボーイフレンドを作るために早く性交渉を許してしまう、または性交渉を要求された時に拒絶できない。
などの可能性があると考えているようです。こういうデータを見ると、早期の性教育の必要性を感じますね。