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032012
世界の起源
「The origin of the world(世界の起源)」と名付けられた一枚の絵があります。
この絵は1866年、フランスの写実主義の画家、ギュスターヴ・クールベによって描かれました。股を大きく開いた女性の局部をクローズアップした構図、そして「世界の起源」というタイトル。非常に印象的な作品です。
この絵はもともと、オスマントルコ帝国の外交官、カリル・ベイが個人的な趣味でオーダーしたものだそうです。彼はもともとこの絵を芸術としてよりはポルノ趣味の一環として扱っていたようで、とっておきの客だけに見せびらかすようなやりかたで鑑賞していたそうです。その後、様々な人の手にわたり、現在はオルセー美術館に収蔵されています。
その長い歴史の中で、この絵は「性の理解や開放のための運動」あるいは「芸術とポルノの境界問題」を象徴するようになったようで、現在では世界中でこの絵をめぐる騒動が引き起こされています。
1994年には、フランスで、この絵を本の表紙絵にした小説が警察の圧力により店頭展示から外され、大きな物議をかもしました。同様の事件は2009年のポルトガルでも起こっています。
さらに2011年には、この絵をfacebookにアップロードしたアーティストが運営者から警告を受け、アカウントが停止されるという出来事も起こっています。このfacebookによる措置は批判を集め、多くのfacebookユーザーが自分のプロフィール画像をこの絵に差し替え、抗議したそうです。今はそのアーティストのアカウントは使えるようになったそうですが、「ポルノ画像をアップロードしないという条件つき」だとか。
絵の歴史的経緯にしても現在の騒動にしても、「芸術は見る人によって意味が変わる」のがよくわかりますね。
ちなみにこの絵は、オルセー美術館のポストカードの売上ではルノワールの「Bal du moulin de la Galette(ムーラン・ド・ラ・ギャレット)」についで2位だそうです。